まずは『Mobile Design Pattern Gallery』をサクッと読んでおけ
O'Reilly eBookのセール中に$9.99で購入した*1『Mobile Design Pattern Gallery』*2を先日読み終えた。
普段iOSアプリ制作を行なっている自分にとって興味深い話題を扱っている本だしセール期間中だったこともあり、勢いで購入して読み始めることになったのだが、英語で書かれた本を、しかもeBook(PDF/EPUB)という形式のものを、果たして自分はきちんと最後まで読み切ることができるのか、読み始めた当初は若干心配だった。ところが、いざ読み進めてみると、思いのほか抵抗なく読むことができた。そして、この本が今後の自分のiOSアプリ制作に力を与えてくれる本だということを実感した。感想をまとめてみることにする。
本書の良いところ
プラットフォームに依存せずにUIのありかたを考えられる
本書は章ごとに特定のUIの構成要素に着目し、その構成要素を使用しているアプリのスクリーンショットを実例として多数掲載している。実例として取り上げられているアプリは特定のプラットフォームに依存することなく、iOS、Android、BlackBerry、WebOS、Symbian、Windows Mobileといった多くのプラットフォームから選び抜かれている。また、章の冒頭ではその章で取り扱うデザインパターン全てをプラットフォームに依存しない簡略化された図で示されている。このような書き方により、読者はプラットフォームに依存せずにUIのありかたを考えられる。
アプリを制作するときにはまずOS標準で用意されているクラスを利用し、それでは実現できないものについては自作クラスを組み合わせて目的の機能を実現する。だが、制作されたアプリが目的の機能を備えているとしても、それが使いやすいアプリかどうかとなれば話は別だ。使いやすさを意識するということは、実現機能やプログラムの開発・保守の効率などとは違う観点からアプリ制作を考えるということだ。情報をどういう単位に分割しそれらの表示をどのタイミングで切り替えるのか、表示する情報はどのようにレイアウトすべきか、ユーザに快適に操作してもらうためにはどうすればいいのか、などなど。
このようなことを考えるときに、各プラットフォームで用意されているAPIの扱い方ではなく、プラットフォーム間で共通する表現方法に着目することにより、目的を果たすための実装方法をより広い視点から検討することができる。
書かれている内容を多面的に評価して考えを深められる
この本でアプリのあるべき姿を単に抽象的に語るのではなく、実際のアプリを多数取り上げている。自分でそのアプリの動作を確認することができるし、利用者のレビューを調べあげることもできる。アプリによっては既にバージョンアップされて本書での紹介内容とは異なるものになっているものもある。どこが変化しているのかを見てみるのも面白い。
eBookで読むことの強み
今回『Mobile Design Pattern Gallery』は主にiPadのiBooksで読み、電車などでの移動中には少しiPhoneのiBooksで読んだ(いずれもEPUB版で)。本の内容が良かったのに加えて、この読み方が快適だったのが印象深かった。
ケチらずにカラーで読める
『Mobile Design Pattern Gallery』は紙の本ではモノクロ版とカラー版の2種類があるようだ。
- 作者: Theresa Neil,Jenifer Tidwell
- 出版社/メーカー: Oreilly & Associates Inc
- 発売日: 2012/03/13
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 1人 クリック: 23回
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Mobile Design Pattern Gallery, Color Edition
- 作者: Theresa Neil
- 出版社/メーカー: Oreilly & Associates Inc
- 発売日: 2012/05/25
- メディア: ペーパーバック
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モノクロ版よりもカラー版の方が価格が高いが、この本は断然カラー版で読んだ方がいい。ひとつの画面上に複数存在しているオブジェクトのうち一部を区別したり選択状況や状態変化を画面表示に反映させる方法の例として示されているスクリーンショットが多いのだが、それらの内容を読み解くためにはカラー版の方が向いている。
eBookはカラー版で、紙のモノクロ版よりも安い。
デザインに自信のないモバイルアプリ開発者は、まずこれを気軽に読めばいいのでは?
この本を読み進めながらその内容を同僚のデザイナーに話してみたら「そうなんですよー」とあっさりと返されることが多かった。つまり、この本はデザイナーにとってはある意味では当たり前のことがたくさん書かれているということらしい*3。たしかに、これまで彼からダメ出しをされたり説明を受けたりした点がいろいろと載っているような……。
プログラムを書くことが中心の人はSDKを使いこなすことの方により多くの力を注いでしまいがちな一方で、それだけをやっていても使い勝手の良いアプリが生まれないことは百も承知なのだ。でも、何から手を付けてどこまでそれを続けるといいのか、ひとりでは見当がつかないことも少なくないように思う。そういうときに本書が手元にあることは心強いものではないだろうか。